本作はハリーポッターシリーズの2作目の作品です。本作では前作で登場しなかった人物や魔法界の社会風潮についても描かれています。その社会風潮は現実世界でも共通するところがあります。

今回は魔法界のあらゆる格差に着目して考察します。ファンタジーの世界から見える現実的で社会的要素の強いメッセージを知ることでより本作を楽しむことができるでしょう。

血筋からひも解く格差社会

魔法界にはさまざまな血筋の魔法使いがいます。本作では、現在の魔法使いのほとんどにマグルの血縁が入っているとハグリットが述べていますが、この血筋が物語に大きく関係してきます。ファンタジー映画ですが現実味のある要素で、物語の結末の大きな要因になっています。

純血

純血とは両親ともに魔法使いであり家系にマグルがいないことを指します。本作で登場するマルフォイ一家も純血主義です。ドラコ・マルフォイの父親であるルシウス・マルフォイは言葉遣いや身なりなど気品高く名家であることを物語っています。

しかし純血でない魔法使いやマグルに理解のあるウィーズリー家のような魔法使いを侮辱するシーンがあり、純血の魔法使いだけが優れていると勘違いした思想を持つ人物です。

それは息子であるドラコも引き継いでいるため、ドラコはマグル生まれのハーマイオニーのことを穢れた血と侮辱しています。親や家系が優れているから自分も優れていると勘違いする人物は、現実世界でも魔法世界でもどこにでも存在するのでしょう。

半純血

半純血とは片親がマグルである魔法使いのことを指します。ハリーやヴォルデモートも半純血です。ハリーは母親がマグルでした。一方、ヴォルデモートは父親がマグルでした。
しかしヴォルデモートはマグルである父親や自分が半純血であることを嫌いました。そして本名であるトム・マールヴォロ・リドルを入れ替え、ヴォルデモートと名乗るようになりました。

現実世界の今の日本では、外国人とのハーフやクォーターなどあたり前ですが、つい昔まではあたり前の出来事ではなく、誹謗中傷の的だったかもしれません。

マグル生まれ

マグル生まれとは両親ともにマグルである魔法使いのことを指します。ハーマイオニーはマグル生まれの魔法使いですが、親が魔法使いでなくてもハーマイオニーのように優秀な生徒は存在します。
ですが、ドラコのような純血主義の魔法使いからは誹謗中傷を言われることもあります。

それでもハグリットのようにマグル生まれの魔法使いを認め差別なく受け入れる魔法使いも多くいます。現実世界でも国際的な人種差別や誹謗中傷のニュースは少なくありません。魔法界の格差や差別は現実世界を描写していることがわかります。

しもべ妖精

本作の序盤で登場しキーマンとなるのがしもべ妖精のドビーです。ドビーはマルフォイ一家に仕えるしもべ妖精です。身にまとうのはボロボロの布きれのみで、ひどい扱いを受けながら一家につかえています。

仕事でミスをするとひどい仕打ちをされたり、殺すという言葉を言われ慣れているくらいに一家から冷たく扱われています。現実世界にはこのような扱いを受ける家政婦はいないと思いますが、ドビーがこのような扱いを受けているところに格差を感じます。

ホグワーツ内の生徒格差

血筋にも格差はありますが、学びの場であるホグワーツの生徒間にも格差があります。現実世界でも勉強ができる優等生やスポーツが得意な男の子は周りから一目置かれる存在といえるでしょう。
しかし同様に現実世界でも魔法の世界でもいじめられっ子や周りから煙たがられる生徒というのも存在します。

監督生

ホグワーツにはグリフィンドール、スリザリン、ハッフルパフ、レイブンクローの4つ寮がありそれぞれに監督生がいます。現実世界の学級委員長や部長やキャプテンといったところでしょうか。
監督生は他の生徒の手本的な存在で先生からの信頼も厚いです。監督生は新1年生を寮の談話室に案内したり、夜遅い時間に廊下を見回り生徒たちを監視します。

本作でもグリフィンドールの監督生であるパーシーが、夜に廊下で遭遇したマルフォイ達を注意する場面があります。いつも自分が一番偉いような態度をとるマルフォイも監督生の指示に珍しく従う場面であり、監督生の立場が確立しているのがわかります。
そして監督生であるパーシーも監督生に対するマルフォイの口調を注意する点から、監督生である自分を誇らしく思っているのが伺えます。野心家で真面目なパーシーらしい場面です。

クィディッチ

生徒から人気の高いスポーツのクィディッチですが、ハリーは1年生からシーカーに抜擢され生徒たちからも大人気になりました。そしてハリーが使うニンバス2000も周りから人気を集める要因の一つでした。
本作ではマルフォイが新作のニンバス2001をもって登場し、ロンがすぐに反応していました。サッカーやバスケで新しいシューズを使ったり、テニスで新しいラケットを手に入れた子に群がる様子に似ています。クィディッチの試合に多くの生徒が応援しにくる姿は、人気度の高いスポーツの象徴といえるでしょう。

変わり者の生徒

本作で変わり者といえば嘆きのマートル。彼女は女子トイレに住み着く幽霊で、ハーマイオニー以外の女子生徒がマートルのいる女子トイレに来ることはありません。
マートルが幽霊となってトイレに住み着くようになったのは、50年前のホグワーツで他の生徒からいじめられていたことが発端でした。いじめられてトイレに逃げて密に泣く姿はどの世界でも起こりうることなのでしょう。

50年前にもあったホグワーツ内の生徒格差

本作でキーワードになるのが秘密の部屋ですが、50年前にも秘密の部屋が開けられたといわれています。そこでも秘密の部屋を開けた犯人捜しに生徒内の格差が影響しています。
当時疑われたのがホグワーツの生徒だったハグリットです。

ハグリットは学生の頃から生き物を育てることが好きで、50年前のハグリットは周りに秘密でアラコマンチュラという魔法動物の蜘蛛を卵の状態から大切に育てていました。しかしそれを当時監督生だったトム・リドルに見つかりその蜘蛛が事件の犯人なのではないかとトム・リドルは主張しました。

当時変わり者に見られていたハグリットと比べ、トム・リドルは成績優秀で模範的な監督生でした。唯一、ダンブルドアがハグリットが犯人ではないことを見極めましたが、変わり者の生徒と優秀で先生からの信頼も厚い監督生であれば、監督生の意見を信じる人は多いことでしょう。

このように本作では生徒のそれぞれの立ち場から生じる生徒内の格差が大きく物語に影響しています。そして現実世界のいじめ問題などに共通する考えだといえるでしょう。

血筋に悩むハリーにダンブルドアからのメッセージ

本作では血筋や生徒間の格差が大きく物語に影響していました。ファンタジーの世界に魅了されながらもどこか社会格差や学校内の格差に現実的な要素が詰まっていました。ハリー自身も生まれながらに有名であること、その生い立ちの背景に悩みますが、そんなハリーに対してダンブルドアが印象的な助言をこのように述べています。

「自分が何者であるかはもって生まれた才能ではない。自分がどういう選択をしたかで決まる」

血筋自体に悩まないで今生きている過程で何を選択するかで己が決まることをダンブルドアは教えてくれました。血筋は変えられないけれど、学校内の格差は変えることができます。

自分で自分の行動や立場などを抑えつけず、自分らしく行動し誇りを持つことが大切なのだと感じるメッセージです。

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