スター俳優を惜し気もなく共演させて話題の『エクスペンダブルズ』シリーズの最新作が、この「3」(2014年)です。
一癖も二癖もある歴戦の「傭兵集団」をまとめあげるバーニー(シルベスター・スタローン)を中心に、副官格のクリスマス(ジェイソン・ステイサム)らがスクリーン狭しと暴れまくるシンプルなストーリーがかえって観る人を飽きさせない魅力となっています。
今回はメンバーのシーザー(テリー・クルーズ)が生死を彷徨う負傷によって起きた、新旧交代劇を絡めながら「傭兵の友情」をも描いています。
適役のストーンバンクス役のメル・ギブソンの大御所感も圧巻!
「大作なのにB級」という造りが、映えている作品です!!
ネタバレあらすじ①ターゲットの正体は元仲間の傭兵
この作品は4作戦が詰め込まれた構成で、前作同様に息つくヒマもない“ジェットコースター・ムービー”に仕上がっています。
今作では、エクスペンタブルズへの依頼の窓口がチャーチ(ブルース・ウィルス)からドラマ―(ハリソン・フォード)に代わっています(おおもとは「CIA」と、こちらは変わらず)。
ミッションの基幹は、ターゲットの武器商人「ミント」なる人物の排除でした。
ミッション① オリジナルメンバーの“ドク”を救え!
ミントの正体は掴めていないものの、扱う品の特殊性から莫大な利益を得ている武器・兵器売買組織壊滅のために首謀者の通称・ミントなる人物の殺害を請け負った「エクスペンタブルズ」。
現有戦力では心もとないために、まずはエクスペンタルズ自体の組織力の強化と長らく行方が分からなかった創立時からのメンバーであるドク(ウェズリー・スナイプス)の奪回から、「3」はスタートします。
ドクは、医療知識にも長けた「ナイフ使い」の達人でしたが“ある要人暗殺”に失敗して、極秘裏にテンザリ刑務所に投獄されていたのでした。
その刑務所の周囲は沙漠で、視界は360度。独力では脱獄できない造りになっています。
その難攻不落の刑務所には、専用の列車線があるだけで外界とは遮断されて取調べと言う名の拷問や虐待が日常的に行われていると思われます。
その外界と刑務所をつなぐ列車でドクが護送されてくるという情報が!
そこで、バーニーをはじめとするクリスマス、ガンナー(ドルフ・ラングレン)、トール(ランディ・クゥートゥア)の4人で襲撃して見事にドクを助け出したのでした。
ここでの襲撃には、ドクを加えて増強しなければならないエクスペンタブルズの現況と、それだけ敵の組織が巨大だという事を表す効果がありました。
序盤から“派手にブチかまして”観客を引き込む事にも成功しています。さすがはスタローン(製作にも携わっている)と言わざるを得ない展開と言えるでしょう。
ミッション② 敵の正体にたじろいで、銃弾を喰らう
ドクがメンバーに復帰して、いよいよドラマ―からの指令(依頼)に着手です。
ドクは「なんで作戦終了後に迎えに来ないんだ!」と冗談半分でバーニーに毒づきましたが「人数が足りなかったんだよ」のひと言で、黙って作戦に加わりました。
ただ、作戦と言ってもモガティッシュ(ソマリア)で荷揚げしている本人を含むミント一味を港で襲撃、首謀者の“排除”を敢行するというシンプルな作戦です。
メンバーが現場に踏み込んで、現場を荒らしている隙に、ロングレンジの射撃が得意なガンナーかバーニーがミントを狙撃するという手はずでした。
射殺後には、メンバーのシーザーが手配してきたボートに乗って逃走。これで、「一丁上がり!」のはずでしたが…。
バーニーのライフルのスコープがサイト・インしたのは、元エクスペンタブルズの仲間で創成期のメンバーのストーンバーグだったのです!
驚きとためらいで引鉄を引けなかったバーニーに気づいたストーンバーグは、挑発の意を込めてバーニーではなくシーザーに銃弾を撃ち込みました。
これによって形成は逆転、バーニーらは瀕死のシーザーをオリジナルペイントの愛機・グラマンHU-16アルバトロスで命からがら米国に還りついたのです。
ネタバレあらすじ②新メンバーで追いつめたが…
任務に失敗したバーニーに対して、ドラマ―はバーニーを叱責します。バーニーはバーニーで「標的がストーンバーグとは聞いていない」と突っぱねます。
このやり取りはドラマ―にとっては想定内らしく、「もう一度、チャンスをやろう」と譲歩する形を取りましたが「ただし、“生け捕り”だ」と条件を変更しました。
ハーブ(=国際司法裁判所)で裁判にかけるためです。より困難さを増した作戦に、躊躇したバーニーでしたが、失敗した手前、依頼を受けざるを得ないのでした。
全米をまわって新兵をスカウト
生死の境を彷徨うシーザーを病室で見たバーニーは、ひとつの結論を出しました。
生き残ったメンバーを集めて、「チームの解散」を表明したのです。
メンバーは各々、エクスペンタブルズは傭兵部隊のなかでも特に特殊任務に長けた集団であり、それだけ死と背中合わせだという事も肌身に染みて理解しています。
ところが、バーニーはクリスマスが言うところの「何度も修羅場を潜り抜けてきた仲間」という点に引っかかってしまったのです。
本来はクールに割り切って、任務遂行のために自分の持つ能力を最大限に生かしているだけでいいものを、“絆が強くなり過ぎた”のを恐れたのでした。
つまり、「目の前で仲間が撃たれるのを見る辛さ」と「老いとの闘い」を仲間に味あわせたくなかったのです。
筆者は本編ストーリーもさることながら、この辺りの『男の友情』が描かれる手法に極端に弱いのですよ。
『ロッキー4/炎の友情』(1985年)で、好敵手にして親友だったアポロのリターンマッチに臨むロッキーの姿にもダブって見えてくるんです。
このスタローン流「男の美学」にコロリとやられてしまうんですよね。
閑話休題。そうして、古くからのメンバーを切ったバーニーは旧知の“傭兵斡旋業者”のボナパルト(ケルシー・グラマー)の案内で全米・メキシコをスカウトして廻りました。
結果、メキシコで元海兵隊員のスマイリー(ケラン・ラッツ)、ニューヨークで酒場の女バウンサー(用心棒)をしていたルナ(ロンダ・ラウジー)、アリゾナでロッククライミングに興じていたハッキングの天才・ソーン(グレン・ハウエル)、エリート軍人で銃器の扱いに長じたマーズ(ビクター・オルティス)を新メンバーに抜擢します。
この若い精鋭たちとストーンバンクスを捕獲にブカレスト(ルーマニア)へと飛んだのでした。
副操縦士席には「助けがいるのなら考えるぞ。なんなら手伝おうか?」と、皮肉混じりに申し出てきた民間軍事会社(=傭兵会社)を経営するトレンチ(アーノルド・シュワルツェネッガー)が座っています。
どうやら「本当に来たのか?」というバーニーの言葉通りに、作戦後の撤収も担当するようです。ここでも、スタローン流の“戦場の友情”が垣間見えて実に痺れる展開になってきました。
ミッション③ 「ストーンバンクス生け捕り作戦」成功!しかし、逆襲の魔の手が
ドラマ―の情報によれば、ストーンバンクスは絵画の取引を装って武器の商談のためにブカレスト入り。36時間はルーマニアに滞在するものの、そのあとの行動は全くつかめていないとの事でした。
バーニーは昔ながらのやり方で、商談の行われるビル外で作戦を展開しようとしましたが、ルナの「85年公開の映画じゃないんだから」と“現代版の方法”をソーンから説明させます。
その作戦とは、ソーンがセキュリティシステムに潜入してビル全体をコントロールしている間に、ストーンバンクスを連れ去るというもの。
ちなみに、この「85年公開の~」という作品は『ランボー/怒りの脱出』(主演はもちろん、スタローン)と思われます。そのほかにも、逆襲を受けて河原で倒れていたバーニーを見て、ストーンバンクス配下の捜索隊が「映画なら立ち上がって逆襲するのにな」と、揶揄するシーンも。
この作品、こういったB級感がたまらなくイイです!
そうした新メンバーたちの活躍によって、ストーンバンクスの生け捕りに成功しました。
ところが、その「ブツ」を愛機に積み込んで帰国しようとしたエクスペンタブルズを載せた護送用ワゴンがヘリから襲われます!
ストーンバンクスの腕時計にGPSが仕込まれていたのです。
この対策については、歴戦の猛者のバーニーやハイテク戦術を日常としている新メンバーが気づかなかったという脇の甘さというか、作品の持つ“ご都合主義”が垣間見えて「?」な展開でした。
ですが、とりあえずはストーンバンクスの狡猾さや用心深さを表現するには、ちょうどいい塩梅という事で納得ですね(笑)。
かくして新メンバー4人は、ワゴン車爆撃後に捕虜に。バーニーのみ山間部を逃げてトレンチの待つ集合地点に辿り着いたのでした。
これで、エクスペンタブルズは2連続のミッション失敗という事になったのです。
ネタバレあらすじ③新メンバー救出とストーンバンクス生け捕りの両面作戦
トレンチの待つ地点に着いたバーニーにストーンバンクスからメールと画像が届きます。
内容は新メンバーを預かっているという事と、その証拠となる画像が添付されていました。
バーニーは、「48時間以内に救いに来い!」というメッセージに応えるためと態勢を整えるために一時帰国しました。
ミッション④ 新メンバー救出とストーンバンクスとの決着
ドラマ―が、同じ標的に対して2度も失敗したチームを再々度も使うのには客席で観ていて腑に落ちない点として違和感を持っていたのは事実でした。
しかし、「エクスペンタブル(消耗品、汚れた仕事屋)」という意を汲むと納得したのも憶えています。
そして、ストーンバンクスが呼び出したのは彼の組織の拠点があるアズメニスタン(架空の某国)です。ここの軍隊をも配下に置いて、武器・兵器売買で得た利益で一大帝国を築いていたのです。
バーニーは帰国したものの、整える態勢などなく武器や弾薬を補充するだけでした。
するとそこに、新メンバー選考時に振るいにかけられたガルゴ(アントニオ・バンデラス)がひょっこりと現れたのです。
彼は独自の嗅覚でバーニーのアジトを突きとめて、みずからを売り込みにきたのです。
もともとは、機敏な動きを持っていた彼を臨時的に採用したバーニーは2人だけで、滑走路へと飛び出しました。するとそこには、四つの影が…。
バーニーのピンチを知った旧メンバーのクリスマス、ガンナー、ドク、トールの4人が待ち受けていたのです。
ここに、旧メンバー+ガルゴという救出部隊が編成されたのでした。当然、ストーンバンクスは「生きたまま裁判にかける」というドラマ―からの命も受けていました。
火薬量“大”のアクション
そして、最終決戦の場・アズメニスタンの廃墟。
ここでは、80年代アクション映画ばりの火薬量で力と力の対決で魅せてくれました。
そこにはハッキングや指紋認証もない、肉体同士の白兵戦が「これでもかっ!」と描かれています。
加えて、作戦指揮官のドラマ―自身も名と階級を伏せてヘリを操縦。元空軍パイロットの腕前で廃墟内で苦戦するエクスペンタブルズの援護にまわりました。
そして、そのヘリにはCIAに雇われたトレンチと、元エクスペンタブルズで現時点ではトレンチの配下にいるヤン(ジェット・リー)も機上からマシンガンをブチかましています。
ここでは、クリスマスやドクのナイフ、ルナのベアナックルなど各人の特技を存分に発揮して、無事にドラマ―機に救出されます。今回は、新旧メンバーとも犠牲者はナシです。
肝心のストーンバンクスは、バーニーとの一騎打ちに敗れたうえに、自分でセットした爆弾で散って行きました。
「生け捕り」はできなかったものの、武器売買組織を壊滅させたのも「新エクスペンタブルズ」の手柄には変わりありません。
ドラマ―も、その点は承知しているようでした。
映画『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』の評価
このキャスティングを知った段階で、「面白くなるのは当然」と誰しも感じた事でしょう。
確かにエンターテインメントとしては一級品なのですが、筆者のように“ひねたファン”となると、「その先に見えるもの」を期待してしまうんですよね。
それが、今作では「戦場の友情」だったとは!
スタローンらしいと言えば、それまでですがハリソン・フォードやシュワちゃんの使い方が絶妙なんですよね。
最後の乾杯シーンでガルゴを正式メンバーに採用したり、生還してきたシーザーが一緒にバーにいたり…。もちろん、その場には、新旧メンバーが全員集合しています。
今作は、戦闘アクション映画というよりも、ヒューマニズム作品といってもおかしくない要素があって楽しめる映画であると言えるのではないでしょうか。
参考になるサイト
『エクスペンダブルズ3』をさらに深く考えたい人は、以下のサイトを参考にしてみてください。